事業承継 宰相の資格 (「帝王学ノート」 伊藤肇著より)

 「経営者の仕事は大部分は人と折衝することであ」ります。「嘘と真実を見分け、誇大と威嚇とを見抜き、人物の器量を判定して、これを適材適所に使いわける」のです。「その技術に先天的にすぐれているもの、あるいは後天的に習熟したものが成功者とな」ります。

 「『十八史略』のなかに『人を見る明』」について快心の故事がでてい」ます。

 「居テハ其ノ親シム所ヲ視、富ミテハ其ノ与ウル所ヲ視、達シテハ其ノ挙グル所ヲ視、窮シテハ其ノ為サザル所ヲ視、貧ニシテハ其ノ取ラザル所ヲ視ル」

第一に「居テハ其ノ親シム所ヲ視ル」。

 「官をひいて家にいるとき、つまり浪人しているときに、どんな連中とっきあっていたかを観察する。類は類をもって集まるから、低俗なくだらぬ連中と交際していたら、その人間自身が低俗でつまらぬことになる。もちろん、そんなのは落第である。」

第二に「富、ミテハ其ノ与ウル所ヲ視ル」。

 「松下幸之助さんが『金の使い方くらいむつかしいものはない。何故なら、人格がそっくりそのまま反映するからだ』といっているのも、この辺の呼吸である」といっています。

第三に「達シテハ其ノ挙グル所ヲ視ル」。

 「高位高官にのぼったとき、どんな人物を挙用するかを視る。」

  「安岡先生がよくいわれる『六中観』つまり『死中、活有り。苦中、楽有り。忙中、閑有り。壷中、天有り。意中、人有り。腹中、書有り』のなかの『意中、人有り』(心のなかにいつも人物をもっている)である」と。

第四に「窮シテハ其ノ為サザル所ヲ視ル」。

 「俗流におもねらぬ義に強い人間にして、はじめて大事を為すことができる。」

 第五に「貧シテハ其ノ取ラザル所ヲ視ル」。

 「懐具合もよく、万事好調の時には善人でも、貧乏して困ったときには、邪な金とわかつていながら、ついポケットへ入れたくなる。貧して貧せざる人物であるか、…。」