事業承継 創業か守成かを問う

 貞観政要の中でも最も有名な問答が、この「 創業か守成かを問う 」であります。その問答を現代版で紹介しましょう。すこしアレンジが入ります。

 「 帝王学 『 貞観政要 』 山本七平著 日経ビジネス文庫 」より引用します。

 ある時太宗さんが、家来に向かって言いました。

「 ねぇ、社長の仕事ってさぁ、起業と会社を維持するのってどっちが難しいかなぁ? 」
部下の房さんがこれに返します。

 「 社長!起業するときはライバルも多いし、どうなるかわからないし先行き不安じゃないですか。絶対起業の方が難しいですよ! 」

 他の部下の魏徴さん《(私:山本七平)はこの人が好きです》が言い返します。
 
 「 いやいやいや、一旦会社が安定軌道に乗ってしまうと絶対気が緩みますよ。傲慢になって、顧客や社員への気遣いも忘れがちになります。それの積み重ねでせっかく大きくした会社も潰しかねません。だから会社の維持の方が絶対難しいと思います。」

信頼する部下の意見を聞いた太宗社長はこう言います。

「 なる程よくわかった!房ちゃんは俺といっしょに苦しい時を耐え抜いてここまで来たのを良く知っているからな。確かに起業は難しかった。でも、もう起業の時期は終わったんだよなぁ。それならお前らと共に会社を維持していくことに全力で臨みたいと思う。」

「 はい〜 」「 はい〜 」

   帝王学 「 貞観政要 」 山本七平著 日経ビジネス文庫より