困難に直面して発展する  (松下幸之助発言集より) 「心の問題だ]

 東北地方太平洋沖地震で被災された皆さまへ、重ねて心よりお見舞い申し上げます。

松下幸之助の50年前の中小企業の経営者への懇談会(松下幸之助、昭和35年11月20日発言集)より、引用しました。今回の大災害とは、比較にならないかもしれませんが、心構えがよく書かれていると思います。 

「 水害でも、火事でもそうですね。水害が起こった。そして一つの町がすっかり流されてしまった。その隣の町はなんにも被害はなかった。こういう場合がたくさんあります。」

 「 ところが十年後に、流れた町がどの程度発展するか、少しも被害のなかった町がどういうように発展するかというと、これはたいへんな違いです。流れた町が例外なしに全部発展しているのです。」

 「 そういう点を見ると、恵まれたと思ったところは、実は恵まれていないんですね。悲惨な状態になった町が十年先には数倍の発展をするということは、何が原因であるか。」

 松下幸之助は「心の問題だ」と言い残しています。

「 物質的にはなんにも問題はない。これは復興してやらないといけないぞという人々の心の働きによって、変わってくる 」というわけです。

 「 そういうように、悲惨な状態だと考えられる被害が、実は悲惨な状態でなくして、それが発展の基礎をなすものである、という身近な実例から考えてみますと、今(50年前の懇談:筆者)、中小企業がいろんな点において難問題に直面している、いちばん難問題は何かというと人の問題である 」といわれています。

 しかし、「 その難問題である人の問題が、あにはからんや、そこで初めて人を生かすことにお互い気づいて、画期的な発展をつかむものだということになるんではないかという感じが 」するといわれています。

松下幸之助発言集 第1巻 PHP文庫、昭和35年11月20日中小企業懇談会 於:大阪商工会議所)より