吟味して経費を使う  利益を上げたが、経費を余計に使った 松下幸之助発言集より

‘”経費をムダ使いしたり、あるいは必要な経費でも、吟味して合理化することを怠ったならば、たとえ商いを多くして売上げを上げても、純益は逆に減るという結末になる。”

 ”常に危機に直面しているがごとき緊迫感をもって経営の指導にあたる、みずから経営をするという状態になってもらわなければ、こういう状態が今後どんどん起こってくると思うのであります。”
 「皆(1958年松下電器本社の緊急経営報告会:筆者)さんに」

「商いが2カ月間に前年同期と比べて増えている」「のに利益が逆に少なくなっているということは、ちょっと不思議だと考えられる。私(松下幸之助)も実は不思議に思ったんです。」

 「この決算の数字を見るまでは、私(松下)自身もこんなに(利益が:筆者)減っていると思わなかったんです。」

 「というのは、なるほど競争が激しくなりまして、多少販売費用もよけい要ったであろうと考えていました。」

 「また生産がこれだけ増えておれば、コストの引き下がったものも、なかにはでてきておらなければなりません。」

「まあ販売の増加に比例して利益率が増えるということはないとしても、絶対額が減るというようなことは私(松下:筆者)は考えていなかった。しかし、調べてみると絶対額が前よりも減っている。」

 「だんだん調べてみますと、一応なるほどということが分かるのであります。それは人件費について申しましても、人員が前年の同期より」「増えており、これに対する給与が前年同期の2カ月間より」「多くなっている。」「そうすると、なるほどそれだけのものをやはり多く払っているんだな、なるほどこれは経費がよけい要っているなということが分かるんです。」
 
「なおそのほかに、一般管理費であるとか販売直接費であるとか、営業費であるとかそ
ういうものが、これまた非常に多くなっているのであります。この2カ月間に前年と比べて経費、販売経費、宣伝費、そういうものが」「増えているのであります。」

 「人件費が、人が」「増えて」「よけい要っている。」「それだけであればまだ事がしれているのでありますが、そのほかに販売その他の管理費が」「よけい要っている。」「結局これを合わせますと」「よけい要っている。」

 「これは考えなければならないことであります。一応の利益はあげたが、結局経費をよけい使った。まあ経費をよけい使ったうちには、競争が激しいために割引率を上げたとか、あるいはまたその他いろんな競争から生まれるところの経費がよけい要ったとか、いろいろ調べてみると分かるのであります」。
 
 「これはもう非常に商売として恐ろしいことでありまして、儲けても経費をムダ使いし、またムダ使いでなく必要な経費と思いましても、それをさらに吟味して合理化するということを怠っていたならば、商いをよけいして売上げは上がったが、純益というものは逆に減っていくというような結末が出てくるわけであります。」

  松下幸之助発言集第五巻PHP「道行く人もお客様」PHPより