利益から配当しなければならないというが、

「 ずいぶん前になる 」ということですが、稲盛氏も「 期末の決算報告を終えた経理部員に対して、」「 儲かったお金はどこにあるのか 」と尋ねたことがありました。

 その経理部員は、「 利益は売掛金や在庫、また設備など、さまざまなものに姿を変えているので、簡単明瞭にどこにあると言えるものではない 」と答えたそうです。

 そこでさらに踏み込んで、稲盛氏は、「 利益から配当しなければならないというが、それだけの金がどこにあるのか 」と聞いた。「 経理部長は、利益は手持ちの資金としてはなく配当資金は銀行から借りる予定であると述べた。」

 稲盛氏はそれが非常に不思議に思えたので、「 配当をするお金がなくて、わざわざ銀行から借りてくるというのでは、儲かったと言えるのだろうか?」と尋ねた。

 経理部長は、「 はい、それでも儲かったと言うのです 」と答えた。


【キャッシュベース経営の原則】

「 お金の動きに焦点をあてて、物事の本質にもとづいたシンブルな経営を行うことを意味している。」

「 会計はキャッシュベースで経営をするためのものでなければならないというのが、」稲盛氏の会計学の第一の基本原則であります。

「 高度な会計学を知らなくとも誰でも自然に身につけている収支計算がある。」

「 製品をつくり、お客さまに販売して代金をいただく。そのために使ったさまざまな費用をその中から支払う。利益とは、これら支払いのすべてが終わったあとに残ったお金を指すということは、誰でも知って 」います。

 ベースにして、正しい経営判断を行うべきだということになる。この「 キャッシュ 」ベースに経営するということについて稲盛氏の考え方だ。

  「 稲盛和夫実学−経営と会計 日本経済新聞社刊 」より